高剛性・低コスト・作りやすさ。
試験の精度を支える治具を設計
振動試験には、評価対象となる「供試体(強度や性能を調べるためのサンプル)」、振動を加える「試験装置」、そして両者を固定する「治具」が必要です。私が担当しているのは、この治具の設計です。
自動車部品や電子部品をはじめ、供試体の形状や大きさは多種多様です。汎用的な治具で対応できる場合もありますが、複雑な形状の供試体や、高い周波数で振動させる試験では、専用の治具を作る必要があります。
治具の役割は、ただ固定するだけではありません。供試体を実際の使用状態に近い形で取り付け、試験中に余計な振動や共振(振動の幅が大きくなること)が起きないようにする必要があります。正確な試験結果を得るために、形状、剛性、コスト、作りやすさを考えながら、条件に合う治具を設計していきます。
複雑な条件もシンプルに。
パズルを解く面白さがある仕事
私が意識しているのは、できる限りシンプルな構造にすることです。治具はただ複雑な形状にすればいいわけではありません。むしろ、シンプルな構造の方が剛性を確保しやすいうえ、加工もしやすく、結果としてコストを抑えることもできます。
曲面に固定するもの、取り付け位置が複数面に分かれているもの、治具と供試体が干渉(接触)しやすいものなど、供試体の形状・条件は案件ごとに異なります。それを一つひとつ整理しながら、「どうすれば確実に固定できるか」「どこを補強すべきか」「加工しやすい構造にできるか」などを考え、設計します。感覚としてはパズルに近いかもしれません。
難しい条件ほど、考える余地がたくさんあります。派手さはありませんが、方程式を解くように答えを導き出すところに、この仕事の面白さがあると思います。
3Dモデルと実物を用いた解析。
複数検証で最適な構造を導き出す
設計においては、治具を製作する前に3Dモデルを用いた「CAE解析」を行い、強度や振動特性を確認し、構造に問題がないかを検討します。最近では、より詳細な解析ができるソフトも新たに導入しました。高精細な解析が可能になり、供試体の形状や条件に合った構造を素早く導き出せるようになりました。
また、実物を使った「ハンマリング解析」を行うこともあります。解析専用のハンマーで供試体を叩き、その応答を測定することで、振動しやすい周波数や特性を確認します。叩く位置や方向によって結果も変わるため、対象物を見ながら判断する必要があります。
解析は、数値だけで判断できるものではありません。3Dモデルのシミュレーション結果と実物の検証で誤差が生じることもあります。その差を確認し、次の仕事に生かしていくことが大切です。