環境・振動試験を取り扱う規格は、国内はもとより国際標準化されたものまで、さまざま存在します。製品やサービスに求められる品質を確認するため、適正な試験規格を選定することが非常に重要になっています。下記には主要な規格について概要を記述してありますので、規格選定の指針にご利用ください。
主に電気製品を評価する規格です。環境試験の観点では環境分類及び製品の試験方法、安全性を評価する規格です。また環境試験装置の性能試験、具備すべき条件なども制定しています。他の国際規格、ISO規格はこのIEC規格を引用しているケースが多くなっています。
最も著名なISO規格として、品質マネジメントシステムのISO9001や、環境マネジメントシステムのISO14001などがありますが、主に非電気分野を専門に扱って来ましたが、最近は広範囲のテーマを扱っています。最近の規格としてISO16750の自動車の部品・機器の環境試験の標準化を制定しています。
JISとは、日本国内で製造・使用されるさまざまな鉱・工業製品などの我が国の工業標準化の促進を目的とする工業標準化法(1949年)に基づいて制定される国家規格でした。2019年に産業標準化法により、規格名は日本産業規格となりました。英文名はそのままです。その対象は広く、すべての鉱工業製品に対して、形状、品質、性能、生産方法、試験方法やデータ、サービス等について、全国的に統一を図るために標準を定めています。最近の国際規格をJIS化される場合は、国際規格の番号と同じにしており、対比し易くなっています。
鉱工業品
型式・形状・寸法、物理的性質、性能、構造、化学的性質、設計方法、原単位、能力、装備、外観、耐久度・信頼性、配置、騒音、保全性・安全度、成分、機能、試験、分析、検査、検定、その他
プログラム
電磁記録の種類、構造、品質、等級、性能、作成方法、試験、測定、その他
建設
設計方法、施工方法または安全条件
役務
種類、内容、品質、等級、評価方法、用語、記号、単位、提供に必要な能力、その他
米国航空宇宙規格で、航空機やロケットなどの製造に関する各種の規格です。航空工業会(AIA)の航空宇宙企画委員会が策定しています。
形状・寸法、物理的性質、性能、構成、化学的性質、能力、装備、外観、耐久性・信頼性、配置、騒音、保全性・安全性、成分、機能、その他
動作、手順、手法
計量単位、システム、状態、用語・言語、数列、分類、記号・符号、数値
この規格は米国国防省一般的には、アメリカ軍が必要とする様々な物資の調達に使われる規格です。 具体的には、国防総省で制定するMIL仕様書 (Military Specification)、MILハンドブック(Military Handbook)、MIL標準(Military Standard)のほか、連邦規格(Federal Standard)もあります。これらの大半は耐環境性試験の規格です。MIL-STD-810に準拠した試験実績を指している。電子部品関係の規格はMIL-202、MIL-883が適応されている。MIL-STDは歴史があり、環境試験方法のバイブルとも云われ、国内の自動車メーカー、部品メーカーは本規格を参考にしてきました。
規格名 | 対象カテゴリ | 規格番号 |
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IEC環境試験規格 | 電子部品 | IEC-60068 |
RAIL-WAY Equipment Rolling-Stock Shock and Vibration |
IEC-61373 | |
ISO環境試験規格 | 路上走行車-電気及び電子機器環境条件及び試験 | ISO-DIS16750-3:2012 |
Test Equipment for Generating Vibration | ISO-5344:2004 | |
JIS環境試験規格 | 土木および建築 | JIS-AXXXX |
一般機械 | JIS-BXXXX | |
電気・電子 | JIS-CXXXX | |
自動車 | JIS-DXXXX | |
鉄道 | JIS-EXXXX | |
船舶 | JIS-FXXXX | |
航空 | JIS-WXXXX | |
梱包貨物 | JIS-ZXXXX | |
MIL環境試験規格 | ホース関係 | MIL-DTL8794E |
航空宇宙機器の環境試験方法 | MIL-STD-810 | |
環境試験方法-工学的ガイドライン 振動 | MIL-STD-810 | |
環境試験方法-工学的ガイドライン 衝撃 | MIL-STD-810 | |
信頼性試験方法 | MIL-STD-781 | |
NAS環境試験規格 | ねじ緩み振動/衝撃試験 |
IEC(International Electrotechnical Commission)環境試験規格および、JIS規格との対比 IEC規格をJIS規格に対応させた規格があります。その対応と注意点がありますのでご参照ください。
IEC規格 | 対応JIS規格 | 備考 |
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IEC-60068-2-6: 2007 Test Fc: Vibration (sinusoidal) |
JIS-C60068-2-6:2010 正弦波振動試験方法 |
振動試験を理解するための基本事項が学べます。正弦波は実際の環境と異なることが多いので注意が必要です。 |
IEC-60068-2-7: 1983 Test Ga: Acceleration, steady state |
JIS-C60068-2-7:1993(0045) 加速度(定常)試験方法 |
特にナシ。 |
IEC-60068-2-27: 2008 Test Ea: Shock | JIS-C60068-2-27:2011 衝撃試験方法 |
機械式衝撃試験装置、または加速度、速度変化が大きければ動電式振動試験装置の使用ができます。 |
IEC-60068-2-29: 1987 Test Eb: Bump | JIS-60068-2-27:2011 衝撃試験方法 |
回数が多い衝撃試験は、IECで2-27と合併する予定です。 |
IEC-60068-2-31: 2008 Test Ec: Drop and topple, primarily intended for equipment-type specimens. | JIS-C60068-2-31:2013 面落下、角落下及び転倒(主として機器)試験方法 |
JIS-60068-2-32廃止に伴い自由落下を追加している。 |
IEC-60068-2-32: 1975 Test Ed: Free fall. | JIS-60068-2-31: 2013に置き換えられた | IEC規格は存在している。 |
IEC-60068-2-47:2005 Mounting of specimens for vibration, impact and similar dynamic tests. | JIS-60068-2-47: 2008 動的試験での供試品の取付方法 | 振動試験などの治具設計に必要な記述があります。 |
IEC-60068-2-50:1983 Tests Z/AFc: Combined cold/vibration (sinusoidal)tests for both heat-dissipating and nonheat-dissipating specimens. |
JIS-C60068-2-53:2014に統合されました | - |
IEC-60068-2-51: 1983 Tests Z/BFc: Combined dry heat/vibration (sinusoidal) tests for both heat- dissipating and non-heat-dissipating specimens. |
JIS-C60068-2-53:2014に統合されました | - |
IEC-60068-2-53:2010 Tests and Guidance- Combined climatic(temperature/humidity) and dynamic(vibration/shock)tests. | 2014 環境試験方法-電気・電子-第2-53部:耐候性(温度・湿度)と動的(振動・衝撃)との複合試験及び指針 | - |
IEC 60068-2-55:2013 Environmental testing – Part 2-55: Tests – Test Ee and guidance – Loose cargo testing including bounce. |
JISC60068-2-55:2014 環境試験方法-電気・電子-第2-55部:ルーズカーゴに対するバウンス試験及び指針(試験記号:Ee) |
荷台で包装貨物が飛び跳ねる状態を再現する輸送試験です。 |
IEC 60068-2-57:2013 Environmental testing – Part 2-57: Tests – Test Ff: Vibration – Time-history and sine-beat method. | JISC60068-2-57:2018 環境試験方法-電気・電子-第2-57部:時刻歴及びサインビート振動試験方法(試験記号:Ff) |
短時間のランダム状の動的な力にさらされる可能性のある部品,機器及びその他の電気・ 電子製品(以下,供試品という。)の試験方法を規定するものである。短時間のランダム状の動的な力の代 表的な例として,地震,爆発及び種々の移動手段によって誘発される応力がある。 |
IEC 60068-2-64:2008 Environmental testing – Part 2-64: Tests – Test Fh: Vibration, broadband random and guidance. | JIS-C60068-2-64:2011 広帯域ランダム振動試験方法及び指針 |
実際の振動は、ほとんどがランダム振動です。ランダム振動試験の理解と試験技術向上に有効です。 |
IEC 60068-2-64:2019 Environmental testing – Part 2-64: Tests – Test Fh: Vibration, broadband random and guidance. | 現在作成中です | - |
IEC- 60068-2-65: 2013 Test Fg: Vibration acoustically induced. | JISC60068-2-65:2019 環境試験方法-電気・電子-第2-65部:音響振動(試験記号:Fg) | ジェットエンジン、ロケットエンジンが発生する 120dB以上の音響を再現しています。 |
IEC-60068-2-75: 2014 Test. Eh: hammer tests. | JIS-60068-2-75: 2004ハンマ試験 | 製品に他の物体が衝突する環境をハンマで再現しています。 |
IEC-60068-2-80: 2005 Test Fi:Vibration mixed mode. | JISC60068-2-80:2009環境試験方法-電気・電子-第2-80部:混合モード振動試験方法(試験記号:Fi) | 自動車エンジンや、回転する機械の振動を再現する試験です。Sine on random、 Random on randomなど。Sineの掃引速度と制御誤差の関係が示されている。 |
IEC 60068-2-81:2003 Environmental testing – Part 2-81: Tests – Test Ei: Shock – Shock response spectrum synthesis. | JISC60068-2-81:2007環境試験方法-電気・電子-第2-81部:衝撃応答スペクトル合成による衝撃試験方法 | 衝撃応答スペクトルで試験の厳しさを規定する衝撃試験です。ロケットの段間分離衝撃で使用されています。 |
IEC-60068-3-3:1991 Guidance,Seismic test method for equipments. | JISC60068-3-3:2000環境試験方法-電気・電子-機器の耐震試験方法の指針 | 一般耐震試験と特別耐震試験についての指針が記載されています。 |
IEC-60068-3-8:2003 Environmental testing – Part 3-8: Supporting documentation and guidance – Selecting amongst vibration tests. | JISC60068-3-8:2006環境試験方法-電気・電子-第3-8部:振動試験方法の選択の指針 | 正弦波、ランダム、混合モードをどのように選択すべきかの指針です。 |
IEC-60068-3-9:Selecting amongst shock tests 未発行審議中 | ナシ | - |
JIS規格検索
各JIS規格の検索および閲覧は、下記の「JISC(Japanese Industrial Standards Committee)日本産業標準調査会」より行えます。
JISC日本産業標準調査会 https://www.jisc.go.jp/
ISO・IECなど海外規格検索
日本規格協会で検索と購入ができます。閲覧はできません。