振動試験、環境試験のソリューションパートナー

振動試験・複合環境試験の概要

振動試験・複合環境試験とは、機械、電気などの工業製品の機能や性能、信頼性など品質を評価する手段です。
自動車、船舶、人工衛星、航空機、コンピュータ、スマートフォンなど、製品のライフサイクルで機能・性能を失ったり、故障しないように、製品の設計、実験、検査の段階で、使用時の振動や衝撃、高温低温、湿度の環境負荷に耐えられることを、振動試験、複合環境試験によって評価しています。
一般的にあまり知られていない試験ですが、製造業を支える不可欠な評価手段として、重要な役割を担っています。

振動・衝撃環境によるストレスの影響例

  • 疲労による亀裂・破損
  • 電気的・機械的定数の変化
  • 接触部の摩耗
  • 摩擦による表面変化
  • ねじ・ボルトの緩み

動電式振動試験装置の構成

任意に設定した振動数、加速度の強制振動を発生させ、様々な振動試験を行う装置です。動電式振動試験装置は、電力による駆動方式で、油圧式、機械式と比べ、振動波形の歪が少なく、振動数が高いことが特徴です。

各部名称

■ 振動発生機
強制振動を発生させる機器です。本体上部に供試品(試験対象や治具)を取付けます。内部は振動を発生する可動部と電磁石になる励磁の2種類のコイルによる電磁力で振動を発生させています。
■ 電力増幅器
可動部コイルに供給する交流電力と励磁コイルの直流電力を供給する機器です。
■ コンソールラック
電力増幅ユニット、励磁電源部、振動制御装置やオペレーションパネル、その他(I/O等)を搭載するラックです。
■ ブロワ
振動発生機の可動部、励磁コイルを冷却する強制空冷の送風機です。
■ 加速度ピックアップ
振動加速度を計測するセンサです。
■ プリチャージアンプ
計測器の加速度ピックアップの電荷を電圧に変換増幅するアンプです。
■ 振動制御装置
任意に設定した振動状態にする制御装置です。

動電式振動試験装置の仕組み

任意の振動を発生する装置ですが、音楽を再生するオーディオと同じ原理です。
オーディオは音源(CD等)の微小電気信号をアンプで増幅し、大きな電力でダイナミックスピーカーから音を出します。同じように動電式振動試験装置も、制御装置の微小信号を電力増幅器で増幅し、スピーカーに相当する振動発生機から振動を発生しています。
しかしオーディオとは仕組みがひとつ異なります。振動試験装置は、センサと制御装置を用いて振動数や大きさを制御しています。

動電式振動試験装置の特徴

適用振動数範囲が広い(振動波形低ひずみ、2Hz~10kHz以上)
ダイナミックレンジが広い(1/1000(60dB)以下の振動)
大きな加速度を発生できる。

振動の発生原理

音響機器のダイナミック型スピーカーも振動発生機も音や振動を発生させる原理は「右ねじの法則」、「フレミング左手の法則」を利用しています。磁界の中で電気伝導体(コイル)に電流を流し、振動する力を発生させています。そして、「コイルに発生した力」は伝達する可動部や治具に供試品を搭載・固定して振動させます。

複合環境試験装置の仕組み

基本的に複合環境試験は、「振動」、「温度」、「湿度」の3種類の環境条件を同時または各々制御し、供試品に環境ストレスを加えます。試験装置の構成は、振動の発生・制御を行う「振動試験装置」部と、「温度」や「湿度」の制御を行う温(湿)度試験槽2つに大別されます(右図参照)。

実際の環境条件に沿った試験を同時に実施できるので、より信頼性の高い試験が行えます。

振動の基礎

振動現象には次のような種類、特徴があります。

(1) サイン振動

基本的な振動の代表は、振幅と時間の関係が正弦波(サインカーブ)になる振動(単振動)です。
身近なサイン振動の一例として、交流電源AC100Vがあります。
交流の電圧は、最大値141Vではなく、実効値100Vを示します。
これは交流と直流のエネルギー的等価をするためです。
サイン振動の大きさは、ピーク値で表します。

(2) ランダム振動

不規則振動とも呼ばれ、振動振幅が時間とともに変化し且つその変化に規則性が無い振動現象です。但しフーリエ変換を用いるとランダム振動は、振動数と振幅が異なる正弦波の合成波として表すことができます。そのため、複雑なランダム振動は複数のサイン振動として扱うことができます。

(3) 矩形波

矩形波とは非正弦波形の基本的な波形の一種で、LowとHiを周期的に繰り返す波形のことを言います。基本的な波形の一つ。方形波とも呼ばれます。2つの状態を周期的に繰り返す単純な波形であり、矩形波はランダムと同様に、フーリエ変換を使うと周波数が異なるサインをいくつも足し合わせて(重ね合わせて)作ることができます。

振動試験の種類

振動試験における振動の種類や定義について、紹介します。
一般的に振動の大きさを力、加速度[m/s2]、速度[m/s]、変位で[mm]示します。

サイン振動試験

サイン振動試験は、設定されたサイン波の振動を発生させる振動試験です。
ポイント試験とスイープ試験と大きく2種類あります。

基本要素には、以下のものがあります。
基本式 y(t)=A・sinωt (ω:角振動数)
・周期 t=1/f (f:振動数)
・片振幅(0-p)
・両振幅(p-p) =片振幅(0-p)×2

(1) ポイント試験(固定振動数試験)

任意に固定した振動数で行う振動試験です。任意の設定振動数特性評価や共振耐久評価などを目的としています。
試験条件には、以下のものがあります。
・振動数(Hz)
・加速度(m/s2)
・変位(mm)
・速度(m/s)
・試験時間(t)

(2) スイープ試験(掃引試験)

正弦波の振動数を連続して変化させる振動試験です。共振探索や、任意の振動数範囲の特性評価を目的としています。
試験条件には、以下のものがあります。
・振動数範囲(Hz)
・掃引速度(oct/min Hz/s)
・加速度(m/s2)
・変位(mm)
・速度(m/s)
・試験時間(t)

ランダム振動試験

ランダム振動試験は、同時に多くの振動成分(サイン振動)で振動させることができます。このため実際の振動に近い振動環境を再現することができ、また多くの振動数成分で同時に振動させることができるため、短時間で共振現象を捉えることもできます。

試験条件には、以下のものがあります。
・振動数(周波数)[Hz]
・オーバーオール実効値(rms)[m/s2rms]
・パワースペクトル密度(PSD)[(m/s2)2/Hz]
・試験時間[t]

衝撃試験(ショック)

衝撃試験は、衝撃環境に対する耐性、特性評価を行う試験です。衝撃試験は、基本的には規定のピーク加速度及び作用時間のパルス波形の衝撃を供試品に加える試験です。この試験は供試品の機械的な弱点、及び/若しくは特定の性能の劣化を評価したり、衝撃によって引き起こされた損傷、若しくは劣化の蓄積を明らかにすることを目的としています。
標準パルス波形は矩形波のパルスを基本に、正弦半波衝撃パルス、ハーバーサイン衝撃パルス、台形波衝撃パルス、のこぎり波衝撃パルス、三角波衝撃パルスなどがあります。
試験条件には、以下のものがあります。

理想衝撃パルス 正弦半波衝撃パルス、ハーバーサイン衝撃パルス、台形波衝撃パルス、のこぎり波衝撃パルス、三角波衝撃パルス
衝撃パルス作用時間[s] t
加速度[m/s2] A
速度[m/s] V
プリロード[%] P1  P1=B1/A×100[%]
ポストロード[%] P2  P2=B2/A×100[%]

実際の振動と振動の種類

使用環境例 振動・衝撃発生源 種類
トラック 路面凹凸 タイヤ 車体振動 エンジン ランダム振動
路面凹凸 縁石 荷物扱い 衝撃
鉄道 レール 車輪 車体振動 ランダム振動
レール継ぎ目、連結・停車 荷物取扱い 衝撃
航空機 エンジン 空力振動 ランダム振動
着地 荷物取扱い 衝撃+ランダム振動
地震 地震 噴火 衝撃+ランダム振動

複合環境試験の種類

複合環境には、次のようなものがあります。

温度・湿度試験

温度・湿度試験は、規定された温度および湿度の環境下で行なう試験です。
試験必要条件等
設定温度範囲[℃]、温度勾配[℃/min]、設定湿度[%]

複合環境試験[振動/温度/湿度]

複合環境試験は、規定された温度および湿度の環境条件下で振動試験を実施する試験方法です。複合環境試験は、航空・宇宙産業分野の機器で信頼性評価試験として早くから行われてきましたが、近年半導体などの電子デバイスの急速な進歩と、樹脂系の複合材が多用される自動車産業においても、信頼性を確保するために欠かせない試験になっています。
エミックの複合環境試験装置は、「温度」「湿度」「振動」の3条件を試験条件として同時に試験ができるので、複合条件による過酷な信頼性評価試験・故障解析を可能にしています。

試験必要条件等

設定温度範囲[℃]、温度勾配[℃/min]、設定湿度[%]、振動種類、振動数範囲、試験加速度、試験速度、試験振幅、掃引速度、パワースペクトル密度、試験時間

複合環境試験[AGREE高速温度変化]

MIL-STD-781C規格で行なう航空機器を試験するための複合環境試験です。

HALT試験[Highly Accelerated Life Testing]

HALT試験は、高加速寿命試験で、HASSは高加速ストレス・スクリーニングを指します。HASSはHALTを基にしたスクリーニングテストです。 HALT HASSは1980年代後期に、アメリカで始まった試験方法であり、製品にその製品仕様以上の高い環境ストレスをかけて故障につながる欠陥・弱点を探る試験方法です。 製品のモデル・サイクルが非常に早く、製品開発のための試験時間を縮小するための、非常に有効なツールとなります。製品に大きなストレスを掛けることにより、弱点が明確になり、その部分を改良することで、信頼性を大幅に向上させることができます。

振動試験・複合環境試験で取り扱う設定値、単位、量

(1) 試験条件の設定

まず実施する振動試験の振動条件を確認、設定します。
● 供試品と治具質量(想定)
● 最大加速度(最大速度、最大変位)
● 振動数、振動数範囲

加振力の算出

設定した振動試験条件を下記の式に代入して、試験に必要な加振力を求めます。
F = (m0+m1+m2) × α
F : 加振力(N)   m1 : 治具質量(kg)
α : 加速度(m/s2)   m2 : 供試品質量(kg)
m0 : 可動部質量(kg)


試験条件:m0=15kg(F-10K/56の場合)、m1=20kg、m2=35kg、α=98.0m/s2の必要な加振力を
求めます。
F = (15kg+20kg+35kg)×98.0m/s2
   = 6860N

(2) デシベル値

音や振動を取り扱う単位として、デシベル[dB]を使います。なぜデシベルという単位を使うのでしょうか?

倍数計算が簡単

倍数計算では、掛け算が足し算になり、計算が簡単になります。
ここに入力信号を56倍(約35dB)に電圧増幅するアンプと、9倍(約19dB)に電圧増幅するアンプがあるとします。直列に接続すると9倍アンプ出力には、56倍アンプ入力の504倍(56×9)に出力されます。しかし、デシベル計算なら35+19=54(dB)と足し算で簡単にできます。

基準値との相対値を示すデシベル

デシベルは、基準の値(信号)に対して比較する値(信号)が何倍(又は何分の一)であるかを示しています。音の強さ(音圧レベル)、振動や、電力の比較、減衰などは、エネルギー比で表すので、デシベルを使います。
電気系において電力伝送減衰の度合い(比率)を表す増幅率、減衰率増幅率、減衰率など、出力信号と入力信号の大きさの比を扱います。工学的には、「ある物理量を基準となる量との比の常用対数によって表したもの」で、dB という値は「比率」絶対値ではなく、すなわち相対値を示したものです。

デシベルの増減が人の感覚に直線的

人間の聴覚は耳に入ってくる物理的な刺激(エネルギー)が2倍・4倍・8倍・16倍・32倍・64倍…と対数的に増えることで初めて音量が直線的(等間隔)に増加したように感じます(Weber-Fechnerの法則)。身近な例として、音響機器のボリュームを上げた量と、聞こえる音の大きさが同じように変化しますが、これはデシベルを使っているためです。

デシベル値と倍率の関係

デシベルの差 倍率
-120[dB] 1/1000000倍
-100[dB] 1/100000倍
-80[dB] 1/10000倍
-60[dB] 1/1000倍
-20[dB] 1/10倍
-10[dB] 1/3倍
-6[dB] 1/2倍
0[dB] 1倍
6[dB] 2倍
10[dB] 3倍
20[dB] 10倍
40[dB] 100倍
60[dB] 1000倍
80[dB] 10000倍
100[dB] 100000倍
120[dB] 1000000倍

一般的な振動試験

・振動耐久試験
・輸送梱包試験
・段ボール梱包試験等
・生産ラインの検査(機器の半製品段階、製品段階)
・地震対策の試験(建築、石油・ガス機器)
・地震による建造物・機器等の破損や機能障害を防ぐ為の試験研究
・振動計・地震計の校正やセンサの校正・感知器等の動作確認
・振動解析・計測(自動車、船舶、車両、建策、金属等)
・工業用生産機器信頼性試験

■振動試験・限界試験・故障再現試験・実環境再現
サイン振動、ランダム振動、実波形、衝撃(クラシカルショック、衝撃応答スペクトル[SRS])、X、Y、もしくはZ各軸加振、複数チャンネル同時データ計測
自動車・航空宇宙・電子部品・防衛機器・一般工業製品・原子力関係・鉄道交通・その他 JIS、IEC、ISO、MILの他、各機関個別規格
■環境試験
■信頼性試験
■認定試験
振動(サイン振動、ランダム振動、実波形)、衝撃(クラシカルショック、衝撃応答スペクトル[SRS])、温度・湿度、複合環境試験
■設計評価
■破壊試験
振動(サイン振動、ランダム振動、実波形)、衝撃(クラシカルショック、衝撃応答スペクトル[SRS])、HALT試験
■耐久試験
■鉄道車両用品振動試験等

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